パンドラの箱を開けるとき

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『俺が知っているのは、加賀と、あんたの母親の罪だ』 あの時の向上先生の声が、情景とともに思い出される。 「…罪、って……、なに…?」 「………」 向上先生がこっちを見て、ふわりと笑う。 「凛々ちゃんは知らなくてもいいよ。 知るべきじゃない」 「……」 「今はまだ、ね」 そう言って、前方に向き直る向上先生。 視線を外され、私は呪縛が解けたみたいに、ふっと体から力が抜けた。 「……まあ、いずれ話してあげるよ。 それより……」 「…?」 「今夜の目的は、それじゃなかったはずだろ。 ……帰って来たみたいだよ」 「…!!」 バッと、顔を上げる。 前方の曲がり角の向こう側から、車のヘッドライトのような光が浮かび上がっていた。 「……」 「ビンゴ」 私たちが停まっている細い路地の前を通り過ぎる、一台の車。 車種とか、そんなの詳しくないから知らない。 だけどあの車だけは、一目で分かるんだ。 ……高雄の、車だ。 愕然とする私をよそに、車は慣れた様子で、勝手口の前の道路に停車した。 そして、ヘッドライトが消え、運転席のドアが開かれる。
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