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違う、どうしよう。
考えなくちゃいけないのに。
向上先生の顔が、その意思を持って距離をなくしていく。
どうしよう。
私、この人を受け入れるの?
ああ、でも、もう抵抗するのも、疲れた。
……何もかも、考えるのが、つらい――……。
――ガツンッ!
「!!」
唇が触れる手前、物凄い音と衝撃が背中から響いた。
向上先生も驚いたようで、すごい勢いで顔を上げて私の後ろを見る。
私も咄嗟にドアから背中を離して、ぐるんっ、と振り返った。
……と。
「お嬢さん、帰りましょうか」
のんびりとした、歌うような独特な口調。
私は口をあんぐりと開けたまま、固まった。
「よ、洋介さん……」
そこには、上下ジャージ姿の洋介さんがいた。
両手をポケットに突っ込んで、ドアに片足を当てて、微笑んでいる。
…け、蹴ったの?
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