彼と私の関係

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ずいぶん前に、高雄が写真を見つめている姿を見たことがある。 私に気付くと、すぐに隠してしまったから、顔は覚えてないけど、 確かにあれは、高雄と、女の人が抱き合う姿が写っていた。 そして、高雄は一週間か二週間に一度の間隔で、夜に出掛けることがある。 その日は朝まで帰らない。 ――彼女と、会ってるんだ。 だから、この気持ちは、やっぱり隠しておくしかない。 そう、心に決めている。 「お休み、お嬢」 ゆっくり私をベッドに降ろして、優しく囁く。 「…おやすみなさい」 高雄が出て行って、パタン、とドアが閉まる音が響く。 膝に顔を埋めて、溢れるものを堪える。 高雄がキスをくれるのは、嬉しい。 私も自分からねだることだってある。 苦しくなるのは分かってても、一度知ってしまった甘い毒は、忘れられない。 ……だけど、その毒は、確実に私を蝕む。 キスを繰り返す程、そのあとの切なさは増して、 まだまだ大人になれない私は、泣くことしか出来ないでいた。 .
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