事実と真実は違う

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「落ち着いた?」 「……ん」 なんだか、すごく疲れた。 美鈴のこと、高雄のこと、向上先生のこと。 今日起こったあらゆることを、吐き出すように話した。 自分の中に溜め込んでおけなくて、躊躇いとか、そんなこと考える余裕もなくて。 多分、支離滅裂だったと思うけど、洋介さんは、時折たばこを吸いながら、黙って聞いてくれていた。 「寒くない?」 「……ん、大丈夫……」 ハンカチを口に当てて、はー、と息を吐いた。 まだ、家の外。 とりあえず部屋においでと洋介さんは言ってくれたけど、この前のこともあるし、と断った。 かと言って、離れに帰れば、いつ高雄が戻るか分からない。 結局、本家の前にある石階段に並んで腰掛けている。 「…美鈴ちゃんのことは、ショックだったね」 「……うん」 ズズッと鼻をすする。 「事情はどうあれ、好きな人と一緒になれれば良かったんだろうけど。 でも俺的には、自分を傷付けてまでじゃないと突き通せない恋が終わって、安心したよ」 「……」 「ひどい言い方かも知れないけどね。 でも、そんな関係をずるずる続けるよりは、ずっといいと思う。 ……きっと、美鈴ちゃんだって。 知らない男に体を任せるなんて真似、もう二度としないよ」 「…うん…」 「今は、つらいけどね」 「…うん…」 体も心もズタズタだった美鈴を思い出して、また目頭が熱くなった。
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