事実と真実は違う

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「恋人じゃないって言い張ってる相手の家に行ってたんだよね、加賀さんは」 「…うん…」 「抱き合うようにして、部屋に入った。 加賀さんは毎回、その女性の香りを付けて帰ってくる」 「…うん…」 「その決定的瞬間を、凛々ちゃんは自分の目で見た」 「……うん」 整理するように、ひとつひとつ話す洋介さん。 「それは事実だよね」 「うん…」 「でも真実は分からない」 「……」 頭がちょっと混乱する。 そんな私を見ながら、洋介さんがくすくす笑っていた。 「凛々ちゃんが向上先生と、峰岸先生…だっけ。 その人の家に行ったとき、加賀さんは居なかったんだろ?」 「…うん…」 「おかしくない? 普通、恋人に呼び出されて行ったなら、真っ先に部屋に行くはずだけど」 「……。 そうだよね…」 言われてみれば、そうだ。 どうして、後から追いかけた私たちが、高雄より先に峰岸先生の家に着いたんだろう。 「……なんでだろう……」 「うん、分かんない。 もしかしたら先に着いてて、たまたま買い物に出掛けた時に、凛々ちゃんたちが来たのかも知れないし、そうじゃないかも知れない」 「かも知れないばっかりで、ごちゃごちゃになる……」 「うん、だよね」 楽しそうに、ふわふわと煙を揺らす洋介さん。 「どういうつもりで、何のために、峰岸先生に会いに行ったのか。 その真実は、加賀さんしか分からない」
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