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あ…、と、微かに、混乱の中に光が差した気がした。
「要するに、加賀さんのことは彼に直接聞かなきゃ、分からない。
だから、見たままの事実だけで振り回されるのは、早いんじゃない?」
「………でも……」
ん?と、洋介さんが優しく、続きを促す。
結局堂々巡りになる思考回路に、また泣きそうになった。
「高雄は、……嘘つきだもん……」
「……ふ」
洋介さんが、微かに笑う。
「……なに……?」
「いや、……あのねぇ、凛々ちゃん」
「…?」
「例えば、向こうから来るあの車が、加賀さんだとしよう」
「え?」
軽く目配せをした洋介さんに従い、後ろを振り返る。
暗闇の中、この路地に入って来た車のライトが光っていた。
「……洋介さん、なに――」
意味がよく分からず、また洋介さんに向き直ったときだった。
すぐ目の前に、影がかかる。
驚きや疑問よりも先に、ふわり、と。
鼻先にタバコの香りと、頬に、柔らかい感触。
「――な、なに……っ!??」
バッ、と勢いよくのけ反った。
え?え?
今、頬っぺたにキス……!??
当の洋介さんは、にこにこと相変わらずの笑顔。
私一人が、頬に手を当てながらパニックになっている。
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