3613人が本棚に入れています
本棚に追加
/244ページ
どうか、泣いてしまいませんように。
唇を噛みしめながら、自分のベッドで布団に潜り込み、祈るように思った。
「…お嬢」
高雄が帰って来たのは、洋介さんに送ってもらった、約20分後。
彼は小さくノックしてドアを開き、多分、入り口で佇んでる。
声が少し乱れてて、急いで来たんだって分かった。
「お嬢、……寝たの?」
到底眠れるわけがないけど、寝たふりを決め込む。
高雄を信じるにしたって。
向上先生の話を信じるにしたって。
今は、顔を見ただけで涙腺が崩壊しそうだから。
すっ……と、高雄が部屋に足を踏み入れたのが、雰囲気で分かった。
全身にじわっと汗をかきながらも、じっと息を潜める。
「……ごめんな……」
落とすような呟きが聞こえたのは、すぐ隣から。
高雄は、頭から布団に潜っている私を、その上からゆっくりと撫でた。
「寝てても、寝てなくてもいいから、聞いて」
その優しい声色に、泣きたくなる。
最初のコメントを投稿しよう!