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「俺だけのことじゃないから、軽々しく言えないことも……。
お嬢が聞きたいって言えば、俺だって話すしかないのに」
は…、と、小さく笑って、高雄は、いつもと同じ言葉を落とす。
「俺がお嬢に弱いの、知ってるだろ」
じわりと、涙が浮かんでくる。
キシ……と、ベッドが軋んだ。
高雄が、私の隣に腰掛けたから。
「寝てても寝てなくても……。
今から言うことは、すぐに、忘れて」
そして、私を抱き締めるように覆い被さって、耳元に、言葉を囁く。
「………っ」
息が、苦しい。
泣いてしまいそうで、痛い。
「おやすみ、お嬢」
スッ、と立ち上がり、高雄が部屋を出ていく気配がする。
バタン、と静かにドアが閉まった。
……まだ、まだダメ。
声を出して泣いちゃ、ダメ。
高雄に、聞こえてしまうかも知れない。
「………っ、くっ……」
だけど、1分も持たずに、私は布団の中で嗚咽を漏らしてしまう。
なんで泣いてるのか、分からない。
ただ、切なくて、痛い。
高雄が最後に置いていった言葉が、胸に刺さる。
『――好きだよ、凛々』
「……っうぅ、…ぐす……っ」
“忘れて”と言われた告白をされて、朝まで泣いた。
嬉しかったからか悲しかったからなのかは、よく、判らない。
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