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「えっと、生田流総本家のご令嬢ですね。
家元にはお世話になっております。
何度かお目にかかったことがあるかも知れませんね」
今度はニコニコと笑い、わざとらしい口調と言葉。
「え、知り合いだったの?凛々!」
美鈴が、くいっと私の袖を引っ張る。
…知ってるもなにも。
一緒に住んでるし!
なにが、『何度かお目にかかった』よ!
私が言おうとした瞬間、先に口を開いたのは高雄だった。
「私が生田流の師範なので、時折、本家に伺うことがあるんです。
その時に、たまに顔を合わせたことがあるくらいですよね?」
まるで、これ以上なにも言うな、と言わんばかりの高雄の口調。
「…」
それに押し負けて、黙って椅子に座った。
それと同時に、2週間前のことを思い出す。
『竜胆氏の代わりの講師はきっと優しいよ』
――あの時、もう高雄が代わりになるって決まってたんだ。
学校に用事があったのも、清流学園のシンボルが印された冊子を読んでたのも、これのためか!
全てを悟って、頭を抱えてうなだれる。
まさか、高雄が私の先生になるなんて…。
うん、私、ぴったりのことわざ知ってる。
まさに、『青天のへきれき』.
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