驚きの再会

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「ところで、雪江から聞いたかの?」 稽古を終えて、いつものように雑談をしながら琴の手入れをする私に、おじいちゃんがおもむろに尋ねた。 「お母さんから?…てか、電話もないけど」 雪江(ユキエ)とは、私のお母さんのこと。 私の誕生日に『おめでとう』の電話があったくらいで、会うどころか話しすらしていない。 お母さんの話題が突然出て、キョトンとする私の様子を察して、おじいちゃんは困ったような顔をする。 「なんじゃ、仕方ない奴じゃな。 今週末に開かれるパーティーに出席出来ないから、凛々に代わりを頼むと言ってたんだが…」 「ええっ?また?!」 事を察して、私はうんざりする。 お母さんが月に一回招待されている、異業種交流パーティー。 実業家や政治家など多種多様な人達が集まり、話しや食事を楽しむ場なんだろうけど、子供の私にはまだまだ遠い場所。 それなのに高等部に上がってから、お母さんが忙しいときは度々代理を頼まれていたのだ。 といっても、私の場合は特に誰と交流する訳ではなくて、簡単な挨拶周りと、琴の演奏をゲストに披露して母の代理を務めることになる。 まあ、実業家の母が出席すれば、それだけでは終わらないのだろうけど。 とにかく、母は面倒くさがって、私に代理を押し付けることは珍しいことじゃなかった。 「もう…、いつも急なんだから。 どの曲がいいかな?おじいちゃん」 .
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