驚きの再会

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パラパラパラ…、と、隣に控えてあった稽古用の譜面を開く。 すでに私の頭の中は、そのパーティーで演奏する曲目を決めることにシフトしていた。 「テテテン、トントン…」 まるで演奏するかのように、調子を唄いながら右手を動かす。 さっきまで実際に音を奏でていた琴は、私の前でシーツに包まり眠りについていて、また起こすのも忍びないから、頭の中で弦を弾いていく。 「もうすぐ6月だし…梅雨…『五月雨』とか? いや、無難すぎ…。 それにもう少し華やかな方がいいか、パーティーだしね」 ぶつぶつと自分の世界に入り込んで、一心不乱に譜面を追う。 同時に頭の中では今まで演奏した曲目がリアルに流れている。 パーティーには、どの曲がぴったりなんだろう…? 代理と言えど、生田流の令嬢として出席し演奏を聴かせるんだもの。 適当に…なんてできない。 ―…私のプライドだ。 「『風の乱舞』は、どうじゃ?」 不意に、おじいちゃんの提案が耳に入ってきて、頭の中の音楽が止まる。 「…『風の乱舞』? でもそれって……」
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