驚きの再会

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『風の乱舞』…大好きな曲の一つだ。 まるでかけっこをする子供のように、軽やかで明るい曲調。 追いかけて、追いついて、追い越して。 最後は二つの音が重なり、手を繋いで走り出す。 そう、二つの音。 『風の乱舞』は、協奏曲で、独りでは完成しないのだ。 「いいと思う。けど、一人じゃ弾けないし…」 「なに言っとる」 おじいちゃんは私がそう言うと分かってたらしく、待ち構えていたかのように笑った。 「高雄がおるじゃろ」 「……あ…」 ―…そっか。 私がパーティーに出席するなら、高雄も一緒だ。 高雄は師範の腕前だし、どんな曲でも難無くこなす。 高雄と演奏するなんて初めてだけど……出来るなら一緒にやってみたい! 「おじいちゃん!…」 私が目を輝かせて、やる!と叫ぼうとした時だった。 「失礼致します。 家元、お嬢はこちらにおられますか?」 障子の向こう側から、高雄の声が聞こえてきた。
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