驚きの再会

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「おお、高雄か。 ちょうど話しがあったんじゃ。 凛々の稽古は終わってるから、入ってきなさい」 「はい、失礼致します」 スッ、と、障子が引かれると、姿勢を正した『家守』の高雄の姿がそこにはあった。 『離れ』ではあまり見せない、凛とした空気に思わず息を呑んでしまう。 …さっきは学校で会ってたからか、なんだか落ち着かない感じ。 高雄は私を見ると、ふっ、と表情を緩めて、私の少し後ろに距離をおいて座った。 「凛々に用事だったか?」 おじいちゃんはゆっくり立ち上がりながら、高雄に尋ねた。 そのまま本棚に手をやり、ガサゴソと何かをまさぐっている。 「ええ。 雪江さんからさっき電話がありまして。 今週末のパーティーのことで…」 「ああ、凛々に代理を頼むことじゃろ? 今それを話しててな…ほれ」 おもむろに、一冊の譜面を高雄に差し出すおじいちゃん。 高雄はさっと立ち上がり、それを受け取る。 表紙には、『風の乱舞』と点字で印されていた。 「パーティーで披露する曲を凛々と決めてたんじゃ。 お前、一緒に弾いてやってくれ」 「は?…私と、ですか?」 高雄は面食らった顔をしている。 「たまにはいいじゃろ。高雄も師範としての腕を見せておかんとな」 おじいちゃんは穏やかに微笑んだまま高雄の肩をポンポン、と叩くと、高雄は観念したように眉を下げて笑った。 「では、そのように…。 手合わせの程よろしくお願いします、お嬢」 私の前に座り、姿勢よく、『家守』として私に頭を下げた。 .
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