驚きの再会

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「…そうだ」 摘んだ私の頬からパッと手を離して、高雄は思い立ったように声をあげた。 じんわりとした熱さと柔らかい痛みが残った頬を手で摩りながら、私は高雄を見上げる。 「まだ、会ってないだろ。新人の住み込みさん。 …挨拶してく?」 その言葉に、自分で目を輝かせたことが分かった。 「…会いたいっ!」 「了解」 ビシッと手を挙げて返事をした私に、高雄は笑いを堪えながら住み込みさんの部屋に向かった。 …ずっと、会ってみたかったんだよね。 私がおじいちゃんに稽古を付けてもらえるのは、週に多くても2回くらい。 それ以外では本家に出入りすることは意外に少なくて、今まで顔を合わせることがなかったから。 ……あの、独特な弾き方が割と気に入っている私は、毎朝の練習を聴くのが楽しみになっていたのも事実。 きっと、可愛らしい感じの人なんだろうな、なんて、勝手な期待を浮かべながら、高雄について行った。 .
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