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住み込みさん達の生活する部屋は、本家からは渡り廊下で繋がっているものの、玄関が別にあったり、共同で使うキッチンやお風呂があったりと、ちゃんとプライベートが確保された宿舎になっている。
他の流派はどうか分からないけど、うちは割と緩い方なので、住み込みさんが友達を連れて来たり、外泊も報告さえすれば基本自由だ。
…住み込みさんの大半は、高卒で大学に通いながら、とか、バイトをしながら稽古に励む訳だから、限られたプライベートな時間は自分の為に使いなさい、と、物分かりのいいおじいちゃん様々だと思う。
「…高雄はもう会ったんだ?新人さん」
渡り廊下を先に歩く高雄の隣に、小走りで並んで顔を覗き込む。
「うん。昨日、偶然ね。
……今までにいないタイプだったから、最初は住み込みって分からなかったけど」
意味深に含み笑いを浮かべて、私をちらりと横目で見る。
…今までにいないタイプ……。
ますます、楽しみにが増してきた。
廊下を渡り切ると、共同のキッチン。
その奥に並ぶ個室の一番手前のドアの前で立ち止まり、高雄は軽くコンコン、とノックをする。
「…加賀だけど。今、ちょっといい?」
はい、と言う篭った声がドアの向こう側から聞こえて、私はぴくり、と、耳を反応させてしまった。
…声、低くない…?
………男の人……?
女の子だと勝手に思い込んでいた私には、それだけでも結構な衝撃だった。
ガチャリ。
「……え…?」
そしてドアが開いた瞬間、更なる衝撃が私に襲い掛かる。
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