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「前に会ったとき、凛々ちゃん『家守』って言ってたろ?
住み込みで入った時に、家守の説明は聞いてたから、もしかしたら家本の令嬢って凛々ちゃんなのかもって思ってたんだ。
なかなか会えないから、確信が持てなかったけどね」
柱に寄り掛かりながら、穏やかに話す洋介さん。
初めて会った時と同じ、弾むような、歌うような独特な口調で。
…それが、毎朝聴いていた、あの弾むような演奏と重なって、どことなく私を納得させる。
「…なに。知り合いだったの?」
私たちを黙って見ていた高雄が、ようやく声を出した。
少し面食らった顔している。
「知り合い、というか…。
一回、恵那達と一緒にお茶したことがあって。
…でも、こんなことってあるんだね!
ビックリしたよー!」
やっと冷静になった私は、あはは、と笑ってから、すっと洋介さんの前に立って、姿勢を正した。
「改めまして。
生田流総本家跡取りの、凛々と申します」
そう言って、深く頭を下げた。
ぱっと勢いよく顔上げると、洋介さんが、すこし驚いた顔をしている。
「…どうしたの?」
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