驚きの再会

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後ろにバランスを崩すと、高雄の腕にしっかりと収まってしまった。 同時に、握手を交わしていた右手が、洋介さんから離れる。 「た、高雄…!?」 「もう挨拶は済んだろ。 …行くぞ。」 短くそう言うと、洋介さんに「邪魔したね」と軽く片手を上げて、さっさと歩き出してしまった。 「えっ?なに、急に。 …あ、またね!洋介さん!」 「うん。また遊びにおいでよ」 ニコニコ笑顔のまま、手を振る洋介さん。 うん!と、返事をしようとした私の手を、高雄がギュッと握って、私を引き寄せた。 「わ!」 ボンっ、と、高雄の胸に倒れ込むように顔を沈める。 「…辰巳」 頭上から、相変わらず不機嫌な色が混じった、低い高雄の声が静かに響く。 「今はいいとしても…本家や公の場所では、身分をわきまえろ。 お嬢のことは、軽々しく名前で呼ぶんじゃない。 …ましてや、お嬢に手を出そうなんて考えるなよ」 …淡々と、家守として、新人の住み込みに規律を教えてるんだろうけど……。 なんだか、最後の言葉が引っ掛かって……恥ずかしくて俯いてしまった。 洋介さんは、ほんの少しの沈黙を残したあと、 「…わかりました。 以後、気をつけます」 軽く一礼をして、…薄く口元を緩めた。 高雄に手を引かれたまま、渡り廊下に消えて行く私達見つめて、 「…いいね。…堪んない…」 私達に聞こえないよう、意味ありげに呟いた。 .
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