驚きの再会

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「高雄」 ネクタイを緩めながら仕事部屋へ入ろうとする高雄を呼び止める。 「練習、付き合って。今から」 「…今から?」 「今すぐ」 「……。」 別に今すぐじゃなくてもいいのに、敢えてこんな言い方をする。 洋介さんとの再会に驚いて今まで忘れてたけど、…許したわけじゃないんだから。 清流学園の臨時講師になるのを隠してたこと。 高雄が家守と学園での仕事が重なって大変なのは、分かってる。 なのに、こんな風にワガママを言って困らせることで仕返しをする私は、…ホントに、子供だということも。 無理を言って困らせることで、…高雄の気を引きたいだけなんだ。 高雄はしばらく私の顔を見つめて、うんざり…なんて表情は微塵も感じさせない笑顔で頷いた。 「じゃ、スーツだけ脱がせて。 すぐに行くから」 「……。うん」 行き先を仕事部屋から寝室に変えて、高雄はドアを閉めた。 …ほらね。 私の独りよがりの仕返しなんて、アイツには何ともないこと。 もっと、困ればいいのに。 「少しは休ませろ」とか、怒ればいいのに。 どうしたら、もっと、…私に振り回されてくれるんだろう。 ……。 …矛盾してる。 高雄にかまってもらいたくてワガママ言うのに、 それを受け入れてもらうと、…悔しくなるなんて。
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