お似合い

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「あの調子なら、パーティーまでには仕上がりそうだね」 そう言って、夕飯を済ませ、宿題をする私に高雄が紅茶を差し出す。 ふわっと柔らかな湯気と一緒に立ち上る、大好きなアッサムの香りの誘惑に、手を止めてそれを一口啜った。 「うん。高雄と弾くなんて初めてだから、楽しみ」 「それはそれは。光栄です」 「…棒読み…」 高雄はくす、と笑うと、テーブルの上に出されていた選択授業のプリントを取って、私の前に座る。 「…一言くらい、言ってくれても良かったんじゃない?」 「なにが?」 「…臨時講師…」 恨みたっぷりの目で訴える私に、高雄は笑いを噛み殺している。 まるで「驚いただろ」、と言わんばかりの高雄のそれが気に入らなくて、プイ、と顔を反らした。 「…拗ねんなって、お嬢」 「す、拗ねてなんか…」 勢いよく向き直ると、私のすぐ目の前に、高雄の綺麗な瞳があった。 そして、ちゅっ、と軽く音を立てて、考える間もなく高雄の小さなキスが、私を唇を塞いだ。 「…ん」 すぐに唇は離されて、高雄は私に額をコツン、と合わせる。 「…言っとくけど、俺、ロリコンじゃないから」 「……」 …気にしてたんだ。 .
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