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高雄は、昨日確かに言ったはずだ。
『俺、ロリコンじゃないよ』と。
「…説得力、ないんですけど」
翌日、火曜日。
登校して上履きに履き替えたあたしは、そのまま下駄箱から動けずにいた。
…ウンザリ、とした顔をして。
「加賀先生、私、クッキーを焼いて来ましたの。
よろしければ、お茶の時間にでも」
「それより、今日は私たちとお茶の時間をご一緒しません?
先生のお話、いろいろ聞かせて欲しいです」
「加賀先生、私は…」
下駄箱から直線上にある、職員室前の廊下に群がる黄色い声の女生徒たち。
その真ん中でにこやかに相手をしているのは、紛れもなく高雄であって。
朝から嫌な気分になってしまう。
…これから高雄が学校に来る日は、毎回この風景を見なきゃいけないの?
そう思うと、ため息が零れる。
「わお。朝から盛大ね」
肩を叩かれ、振り向くと恵那が笑顔で立っていた。
「ああ…、おはよ。恵那」
「暗いわね、どうしたの…。
………あー、…ね」
あたしの肩ごしに高雄たちを見た恵那は、苦笑いを浮かべている。
「すごいね、凛々のとこの家守、…とと、加賀先生か」
恵那が笑いながら歩き出したので、あたしも後に続いてようやく足を踏み出した。
そのまま、真っ直ぐに高雄を中心とした群れを横切る。
ちら、と、高雄を見たものの、…目が合うことは、なかった。
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