お似合い

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学校では、他人だから。 目が合わないことなんて、当然なんだろうけど……。 自分の予想以上に沈んだ気持ちを抱えたまま、教室へ入り席につくと、前の席の恵那が振り向く。 「そういえば、藤沢がさ」 綺麗に切り揃えられたワンレンボブの恵那の髪が、ふわりと揺れる。 …藤沢くん…。 何気ない恵那の話題に何か引っ掛かりを感じて、首を傾げる。 「今度、こないだの4人でどっか行こうって。 なんか、洋介さんが凛々に対してやけに興味が…」 「っ、洋介さんっ!?」 …ガタンっ、と恵那が話し終わるより先に勢いよく立ち上がる。 目を真ん丸にして恵那があたしを見上げた。 「…な、なに?洋介さんがどうかしたの?」 「どうしたもこうしたも! うちに住んでたんだよ!」 「はあ?」 今度は眉間にシワを寄せ、怪訝な表情を見せる恵那。 洋介さんが、うちの住み込みさんだったこと。 昨日の再会を説明すると、恵那は何故かキラキラと瞳を輝かせていた。 「すごいじゃん!それ。 とうとう凛々にも恋の予感だわっ!」 「…は?」 ものすごく楽しそうな恵那とは対照的に、次は私の目がテンになっている。 「だって、いい年頃の男女が一つ屋根の下、なんて、恋が芽生える典型的なパターンじゃん。」 「い、いやいやいや。 …恵那。 そもそも、私は離れで、洋介さんは本家なんだから、一つ屋根の下ってわけじゃ…。」 有り得ない妄想で盛り上がる恵那に、苦笑いを返しながら手をかざしていると、その手をガシっと握られた。 「甘いわよ。凛々。」
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