お似合い

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「凛々ー?どしたー?」 誰もいない教室に一番乗りして、机に突っ伏していた私の頭上から声をかけられ、顔を上げる。 「…美鈴」 「ん?なんか元気ない? あ、お腹空いてたりする?」 私の隣の席を陣取りながら、首を傾げて笑顔でクッキーを差し出す美鈴。 なんだか緊張感のない雰囲気に、ふっと笑ってしまい、それを一粒つまんだ。 体を起こし、ポイっと紅茶のクッキーを口に放り込む私を見てから、美鈴も笑って食べはじめる。 「なんかあったの? 悩み事?」 「なんかあったというか…」 高雄と峰岸先生がいい雰囲気だったから。 ……なんて言えるわけない。 「……」 答えに詰まる私に、美鈴はにっこりと笑うと、それ以上は突っ込まずにパクパクとクッキーを頬張り出した。 美鈴は、昔からこうだ。 空気を読むのが上手いというか、人との距離感を一定に維持する。 小等部から一緒だった、いわゆる幼なじみの私が相手でも例外ではなくて、昔はそんな美鈴を『大人びた子だなぁ』なんて思ってた。 「美鈴はさ…」 隣の机に広げられたクッキーをもう一粒拝借しながら、 「……好きな人、いる?」 と、美鈴を見ないまま投げかけてみた。 「……。 そうだなぁ…」 一瞬、美鈴の手がピタリと止まった気がしたけれど、思った通り、突拍子もない質問をした私には何も聞かずに、柔らかい声で呟いた。 「…私、…叶わない恋は、しない主義だから」 .
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