お似合い

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結局、その後の高雄の授業は、ほとんど頭に入らなかった。 洋介さんのこと、美鈴のこと、そして高雄と峰岸先生のあの雰囲気が、代わる代わる私の思考を埋めていって。 その上、ミーハーな目で高雄を見つめるクラスの女の子たちにイライラしながら、終始窓の外を眺めていた。 ホームルームが終わり、遊びに行くと言う恵那の誘いを断って、一人下駄箱へ向かう途中。 ヴー、ヴー…… 制服のポケットに入った携帯が震えて、それを開くと『メール受信』の文字。 送信者は、…高雄だった。 「……」 なんだかムシャクシャした気分で、メールを開く。 『ご機嫌ナナメなお嬢へ。 帰りは6時過ぎると思うから、留守番しっかりな』 「……なにこれ」 失礼なくらい子供あつかいされた内容に、キーッ!と叫びたくなる衝動を抑える。 高雄は、いつだってそうだ。 彼の行動や言葉にいちいち心を波立たせる私と違って、いつも余裕で飄々としてる。 今だって、メールを送った時点で私のことなんて、きっと頭から抜けているに違いない。 「……」 カチカチ…、と素早く返信を打つ。 『お察しの通り機嫌が悪いの。 だから一人で留守番は無理』 送信ボタンを押して、ため息をつく。 意地になって困らせて、相手にされなくて、それでもまた意地になって……。 いつものパターンだ。 一体、いつまで私は、こんな出口のない気持ちを抱き続けなきゃいけないんだろう。
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