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「学校はプライベートじゃなかったんじゃないの?」
30分後。
校門から少し離れた人気のない公園から、高雄の車に乗り込む。
仕事よりも私を優先してくれたことが嬉しいくせに、気づかれたくなくてワザと挑戦的なことを言う自分はホントに可愛くない。
だけど高雄は、そんなことお見通しのように目を細めるだけだった。
「おかげさまで、仕事を持ち帰るハメになりましたよ?お嬢」
「……だったらメール無視すれば良かったじゃん」
「よく言うね。
俺に出来ないこと分かってて」
「……」
「お嬢が俺の性格分かってる以上に、俺はお嬢の考えてることが分かるんだよ」
「……嘘だ」
ただの気まぐれのワガママで、あんなメール送ったんだと思ってるくせに。
私の知らない高雄を見て、こんなに不安になってるなんて、知らないくせに。
「……」
そのまましばらく、窓の外を眺めていると、高雄が何の前触れもなく、言った。
「聞きたいんじゃないの?」
「…何が?」
「見てたんだろ。
峰岸先生と二人で話してたところ。
お嬢が機嫌悪いのも、そのせいだ」
「……」
驚いて視線を向けると、運転中の高雄は当然ながら前を見ている。
ただ、口元は悪戯に弧を描いているけれど。
「……なんで」
知ってるの?と言いかけて、言葉に詰まる。
だって結果的には、私は二人の様子に聞き耳を立ててたことになるんだから。
罪悪感みたいな気持ちが湧き出てバツが悪い私に、高雄はふっと息を吐くように笑った。
「いくら息を潜めてても、あれだけ人気がなかったら、意外と気付くもんだよ。
他の生徒ならお構いなしに出てくるのに、隠れてるからすぐにお嬢だって分かった」
「……。
…ごめん…」
得意げにネタばらしをする高雄は、私が素直に謝ったのが意外だったのか、くいっと眉を上げた。
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