お似合い

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「峰岸先生は、学園で会う前から知ってたんだ。 共通の知人がいたからね。 だから、かなり砕けた話もお互いにしたこともある。」 緑が濃くなった街路樹が並ぶ一本道を走りながら、高雄は淡々と言った。 「……それだけ?」 思わず口をついて出た。 だって、……あの雰囲気は…。 もっと、ずっと、長く時間を共にした同士が醸しだせる、そんな空気だった。 高雄は表情を崩さないまま、 「それだけだよ」 と、念を押すように言った。 「……。 …あっそ」 「機嫌は直った?」 「……別に、峰岸先生と仲良くたって、私には関係ない」 「……。へぇ。 じゃあご機嫌ナナメな理由は何」 「……女子高生に囲まれて、鼻の下伸ばしちゃってる講師が気に食わなくて」 「ほほう」 大きな交差点に差し掛かり、目の前の信号が黄色に変わった。 「要するに、お嬢は妬いてるわけだ」 「!」 ズバリ言い当てられて絶句していると、信号は赤に変わって、車はゆっくりと停車する。 ようやくこちらを向いた高雄は、口元は緩めながらも、まっすぐに私を見据えていた。 「言えよ」 「…なにを…」 「俺がお嬢に甘いのは、知ってるんだろ。 …嫌なこととか、して欲しいことがあるなら、はっきり言え」 「……」 高雄は、ずるい。 全部分かってるくせに、最後の主導権は私に握らせようとする。 「……。 ……他の女の子たちに、あんまりいい顔しないで」 歩行者用信号が、点滅している。 ……馬鹿みたいだ。 こんな子供じみた独占欲。 恥ずかしさのあまり、頬が熱を上げ、思わず下を向く。 高雄は返事をするかわりに私の顎をすくいあげると、ゆっくりと影を落とす。 信号が青に変わるまで、高雄はそのまま、 私の唇を塞いだ。 .
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