お似合い

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午後8時。 夕食を済ませ、いつも通り音楽をかけながらリビングで宿題をしていると、仕事部屋から高雄が慌ただしく出てきた。 「はかどってる?お嬢」 「うん、そこそこ。 …って、どしたの?」 「初夏の茶会の打ち合わせで、トラブルがあったみたいなんだ。 今から先方に話に行ってくる。 悪いけど、2時間くらい留守にするよ」 ネクタイを締めて、私の前で書類を確認しながら少し早口で話す高雄。 学園での仕事を持ち帰ってただでさえ大変な日に、家守としての急な仕事が入るなんて。 こういうときは、本気で反省する。 今日、家での仕事を増やしたのは、…私のワガママなんだから。 「……気をつけてね」 痛いくらいに罪悪感が胸を突き刺して、高雄の顔を見れずにつぶやく。 すると、俯く私の頭に、ふわっと大きな手の感覚がして、顔を上げる。 「何かあったら、電話して。 仕事中だって、遠慮しなくていいから」 「……うん」 優しく細められた目は、私の自己嫌悪まで見抜いているようで。 高雄は私の頬を一撫でしてから、いってきます、とスーツの上着を片手に家を出て行った。 ……ピンポーン…。 「…あれ?」 高雄が出ていって、10分ほど後のことだった。 ピンポーン。 宿題を続けていた私の耳に、普段はほとんど鳴らない玄関のインターホンの音が聞こえて、首を傾げる。 …高雄? ここの『離れ』は、一応本家とは別個としてあるものの、私や高雄宛ての荷物なんかは本家に届くことになっている。 来客にしたって、一度本家に通すのが一般的だった。 私以外に、本家から連絡なく『離れ』の玄関に来るのは、高雄くらい。 …でも、どうしてインターホンなんか…。 いつもは、ガレージのある勝手口から出入りするのに…。 普段と違う高雄の行動にハテナマークを浮かべながらも、忘れ物か何かかと思い、玄関の扉を開けた。 .
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