パーティーに潜む嵐の予感

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突然降ってきた高雄の声に、顔を見上げられないまま思わず背筋を伸ばす。 「宿題は?」 「……。 …あ、あと少し…」 「辰巳」 「はい」 「今のところ、俺から伝えるのはそれだけ。 お嬢も今から宿題の続き。 だから、もう戻れ」 「わかりました。 …お嬢さん、お邪魔しました。 楽しかったですよ」 「は、はい。 ……こちらこそ」 「じゃあ、おやすみなさい」 洋介さんはテーブルの上を簡単に片付けると、ニコリと笑顔を見せて玄関へ向かった。 慌てて、その背中を追い掛ける。 「洋介さんっ! …な、なんか、ごめん…」 別に私が謝ることじゃないのに、つい口をついて出てしまった。 だって、なんだか無理矢理帰らせるような形になっちゃって。 「……凛々ちゃん」 座りながらスニーカーを履いていた洋介さんは、私を見上げるように振り返ると小さく手招きをした。 なんだろうと思い、身を屈める。 ――ぐいっ。 それと同時に腕を引かれ、私は前のめりに膝をつく形で倒れ込んだ。 そして、気づけば洋介さんの口が耳元にあった。 「加賀さんて、怒った顔がそそるよね」 ―――は? 「おやすみ。 今度は、マカロン買ってくる」 ――バタン。 いつもの穏やかな洋介さんの笑顔を最後に扉が閉まる。 ……はい? いま、なんて?? 膝をつき、四つん這いになったまま固まっていると、 「…お嬢」 不機嫌を通り越し、イライラする高雄が私を呼んだ。
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