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――『俺のお嬢』。
私のことをそう呼ぶ高雄は、私が7歳の時に、母が急に連れてきた。
『初めまして、凛々ちゃん。
今日から貴方が、俺のお嬢だね』
まだ小さい私の手を取って、屈み込んで見つめられた高雄の笑顔は、子供ながらにドキドキした。
『彼は、凛々の後見人にして、家守の仕事も教えるわ』
そう、おじいちゃんに紹介したのは、お母さんだ。
おじいちゃんは、ただ黙って頷いていた。
家守は、公のパーティーや茶会などのスケジュール調整をしたり、外部と家元とのパイプ役だったり、いわば生田家の秘書。
そして、私の後見人でもある。
私が成人するまで、身の回りの世話やボティーガード、公の場ではエスコートをしてくれたり。
いわば、私の、執事的な存在。
どんな経緯で高雄が選ばれたかは知らないけど、母が『後見人』として彼を連れてきて以来、この関係。
困ったことがあると、最初に頼るのは高雄だし、高雄も私のことを一番に優先してくれる。
そして、母がほとんど帰らないあの『離れ』には、私と高雄が二人で暮らしている。
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