パーティーに潜む嵐の予感

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「今日の振袖、初めて着るね」 心臓のドキドキが聞こえないように、平常心を装って話題をふる。 高雄はふっと微笑んで、 「雪江さんの、若いころのを仕立て直したんだ。 振袖にしては柄は大人しめだけど、この色が珍しくて。 …お嬢は、淡い色がよく似合うから」 後ろに周り、ぎゅうっと帯を締め上げた。 「苦しくない?」 「…うん」 …お母さんの振袖だったんだ。 高雄って、ホントにお母さんからの信頼が厚いんだな。 「出来た。 俺も仕度するから、先に本家に行ってて。 辰巳が、車用意して待ってると思うから」 「…分かった」 等身大の鏡に映る、お母さんの振袖を着た私。 鏡ごしに微笑む高雄の瞳には、…私じゃなく、誰か他の人が映っている。 …何故か、そんな風に感じた。 .
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