パーティーに潜む嵐の予感

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「あ、…ありがとうございます」 驚きつつもそれを受け取り顔を上げると、銀の薄い縁取りがある眼鏡をかけた、綺麗な顔立ちの男性が微笑んでいた。 …わ、美形さんだな…。 思わず見惚れていると、茶色の髪の毛がさらりと揺れ、彼は眼鏡の奥の瞳を細め、首を傾げる。 「…可愛いね。 お雛様みたいだ」 「……」 私の顔を覗き込むように、すっと体を近づける。 その軽い口調と動作に、一気に私の警戒心が強まった。 「…ありがとう、ございます」 ほんの少し後ずさりしたことをバレないように、にっこりと笑顔を作って答えると、彼はますます楽しそうに笑う。 「…そんなに警戒、しないでよ。 君が会場入りしたときから、ずっと声をかけたかったんだけど、…袴姿の彼が、睨みを効かせてたから。 …あれ、ボディーガード?」 「…違います」 初対面なのに、なんだかナンパ臭いような失礼な言い方に、私はムッとする。 …なんなの、この人。 早く離れて、高雄のとこに戻ろう…。 とりあえず、ウーロン茶のお礼をして、さっさと退却しようとした時だった。 「生田雪江さんの、娘だろ? 最初は分からなかったけど、琴を演奏してるの見て、気付いたよ。 …あんまり、似てないね。 …父親似、なのかな」 彼の、色素の薄い瞳の色が私を映している。 手にしていたウーロン茶の氷が、カラン……と鳴った。 .
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