3614人が本棚に入れています
本棚に追加
お母さんのことを、知っている…?
よくよく考えれば、これはお母さんが招待されているパーティーなんだから、お母さんの仕事関係の人がいても何ら不思議はない。
「母とは、…お仕事で…?」
彼は、私がそう尋ねると分かっていたかのように、小さく笑った。
「つい最近、一緒にアメリカでの大きなイベントを終えたところなんだ。
と言っても、直接会ったのは、2回しかない。
彼女の会社が主催のイベントに、俺個人がちょこっと参加したくらいだから。
…どうぞ。よろしくね」
そう言って彼は、名刺を差し出した。
それを受け取り、見てみると、最近話題になっているベンチャー企業の名前がズラリと並んでいた。
…色んな業種を手がける、青年実業家ってことか。
チャラいイメージだけど、…実は、すごい人なんだ。
…でも、…堅い名刺と実物のギャップが、ありすぎ…。
ふと手元に影が出来て、なんだろうと目線を上げると、思いのほか彼の顔が近くなっていて固まってしまった。
「…やっぱ、めちゃくちゃタイプだ。
これから、二人で抜けない?」
「お断りします」
まるで合コンの決まり文句のような言葉を放つ彼に、きっぱりと言ってのける。
お母さんの仕事相手なのに……、と、少し後ろめたい気持ちもあったけれど。
「おっと。
…結構、マジなんだけどな。
オトモダチから、考えてみてくれない?」
「…いえ。
結構です」
「そう?
…好きな人が、いるから?」
「……」
彼は、私をからかっているのか、くくくっ、と笑った。
「生田流総本家の、お嬢様。
…袴姿の彼なら、止めておいたほうがいいよ」
.
最初のコメントを投稿しよう!