パーティーに潜む嵐の予感

18/19
前へ
/244ページ
次へ
「お嬢」 息を飲んで、身動きできない私のすぐ後ろからの声に、呪縛を解かれたように我に返った。 「高雄…」 「探したよ。 一人でフラフラするなんて珍しいね。 …こちらの方は?」 すがるように振り向いた私を見て、高雄は一瞬眉を潜め、その先にいた彼を見据えていた。 彼はというと、相変わらず眼鏡の奥の瞳を細めたまま、余裕の笑顔。 「あ、…お母さんと、仕事でご一緒したことがあるみたいで…。 その話を、少し聞かせてもらってたの。 …心配かけて、ごめん…」 「…そう。 もう、いつでも出れるけど、どうする?」 「……ん、帰ろっか」 私は彼に向き直ると、「失礼します」と帰る旨を告げ、ペコリとお辞儀をした。 「…待って」 背中を向け、高雄と歩きだそうとすると、後ろから不意に手首を捕まれる。 驚いて振り返ると、彼の不敵に笑う瞳が私を映す。 「…報われない恋に辛くなったら、いつでも連絡ちょうだい。 俺が、なぐさめてあげるから」 「……」 「まぁ、…君が望まないにしろ、近いうちに、また会えるよ。 …楽しみにしてる」 するりと、彼の手から力が抜け、私は振り払うように手を離した。 数歩前で待っていた高雄に、小走りで駆け寄る。 「…なにか、言われた?」 「…え?」 見上げると、高雄の怪訝な顔が映り込む。 「顔色、よくない。 …彼、お嬢に何言った?」 「……。 …大丈夫、…少し、からかわれただけ。 気にしないで…」 「……そう」 俯きがちに、高雄と並んでパーティー会場の出口へと向かう。 …動機が、早い。 ひどく、嫌な感じだ。
/244ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3614人が本棚に入れています
本棚に追加