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「…うーん…」
「凛々ー?まだ決められないの?」
高雄に送ってもらったお陰で、遅刻は免れたものの、教室へ入るとすぐに私は頭を悩ませていた。
「…どれも面倒くさい…。恵那(エナ)は決めたの?」
「決まったよ。経営学と食事文化論」
「あー…恵那はそうだよね」
はあ、とため息をついて、また机のプリントに視線を落とした。
私の高校、『清流学園』は名門女子高として有名だ。
財閥や政治家の娘など、いわゆる「お嬢様」ばかりで、『立派な大和撫子を育てる』と言う教訓のもと、普通教科だけでなく特殊な授業も多い。
2年生になって、選択授業が始まるにあたり、それを選ぶんだけど…。
面倒くさがり&優柔不断な私は、選択肢のプリントを前に頭を悩ませていた。
「迷ってるなら、恵那と同じでいーじゃん」
前の席に座り、足を組んでカチカチとメールを打ちながら恵那が笑顔で言う。
恵那は、一番気が合う友達で、老舗旅館の跡取り…いわゆる次期若女将だ。
だから、経営学と食事文化論という鉄板な選択。
「経営学はともかく、食事文化論はないなぁ~。
…せめて、去年の話があれば、テストが簡単そうなのを選ぶのに」
「毎年、講師が違うからね。テストの形式も変わるからアテになんないよ」
「う゛~~ん…」
ついに、机に突っ伏してして呻いている時だった。
「生田さん。選択授業のプリント、どうかしら?」
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