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「警部!おはようございます!」
園山刑事は、今しがた現場に到着した、瀬崎警部に挨拶をした。
瀬崎は園山の上司であり、事件の捜査をともにする相棒の関係でもある。
後ろに撫でつけられた髪、鋭い眼光を放つ瞳、尖った鷲鼻、綺麗に整えられた髭には荒々しさとともに清潔さをも感じさせる。
顔に刻まれた深い皺は、凶悪な犯罪者たちとの厳しい戦いの日々を物語っているようだ。
瀬崎は中年と言っていい年齢であるが、その鍛えられたら肉体からは老いを感じさせず、むしろ若々しさを放っている。
そんな瀬崎は園山にとって憧れの存在だ。
「おはよう。早速だが状況を説明してくれないか」
瀬崎が園山の隣に立つ。
園山は僅かに顔をしかめた。
長年、着続けられた瀬崎のコートにはタバコの匂いが染み着いていた。
瀬崎はヘヴィスモーカーだ。
タバコを吸わない園山にとって、その匂いはある種、拷問のようだ。
尊敬する瀬崎警部ではあるが、唯一、苦手な部分だった。
いつか慣れる日が来るだろうと園山は思っているが、現時点では一向に慣れる気配はない。
園山はタバコの匂いに耐えながら、事件の概要を瀬崎に語る。
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