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「殺されたのはこの家のご主人、伊原市蔵。年齢は五十三歳。なんでも推理小説家の大御所だとか」
瀬崎は目を閉じ、眉間に皺を寄せながら園山刑事から状況を聞いていた。
「で、死因は?」
「それが……」
園山は言いよどんだ。顔色も曇っている。
「どうした。問題でもあるのか」
瀬崎は腹に響くような低い声で園山に尋ねた。
「無い、んですよ…」
園山の返答は相変わらず歯切れの悪いものだった。
「無い……とはどういうことかね」
瀬崎は当然の疑問を口にする。一体、何が存在しないというのだ。
園山刑事は、一旦うつむきながらも、意を決したように顔を上げ言い切った。
「死体が……死体が無かったんですよっ!」
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