密室

2/8
前へ
/31ページ
次へ
「和子さん。うちの人は書斎かしら?」 伊原雪江は家政婦の山岸和子を呼び止めると、そう言った。 「ええ。旦那様はいつもこの時間には書斎にいらっしゃいますから」 和子は答えた。 「呼んできてもらえないかしら?」 雪江が微笑む。 ……それくらいご自分でなさったら宜しいのに。 食事の後かたづけを終え、一息つきたいと思っていた和子だったが、奥様に逆らうことは出来ない。 「かしこまりました」 そう告げて、和子はこの家の主である市蔵の書斎へと向かった。 毛の長い絨毯が敷かれた長い廊下。和子はふと立ち止まった。 ……どこかから悲鳴のような声が聞こえた気がした。 だが、和子はあまり気にしなかった。 書斎の前に辿り着いた和子はゆっくりと扉をノックした。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加