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「和子さん。うちの人は書斎かしら?」
伊原雪江は家政婦の山岸和子を呼び止めると、そう言った。
「ええ。旦那様はいつもこの時間には書斎にいらっしゃいますから」
和子は答えた。
「呼んできてもらえないかしら?」
雪江が微笑む。
……それくらいご自分でなさったら宜しいのに。
食事の後かたづけを終え、一息つきたいと思っていた和子だったが、奥様に逆らうことは出来ない。
「かしこまりました」
そう告げて、和子はこの家の主である市蔵の書斎へと向かった。
毛の長い絨毯が敷かれた長い廊下。和子はふと立ち止まった。
……どこかから悲鳴のような声が聞こえた気がした。
だが、和子はあまり気にしなかった。
書斎の前に辿り着いた和子はゆっくりと扉をノックした。
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