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「どうしたの?騒々しい。うちの人は?」
騒ぎのいきさつを把握していない雪江は、少々、煩わしそうな様子で和子と浩之にそう訊ねる。
「母さん!大変なんだよ!中で親父が倒れてるみたいなんだ!」
そう説明する浩之の言葉に雪江の態度は急変した。
「そんな……」
そう力無くつぶやくと、ふらふらと足元から崩れ落ちた。
和子は駆け寄ると雪江のその細い体を支えた。
「ああ奥様、お気を確かに!」
「和子さん!ここの合い鍵はないのかい!?」
浩之が訊ねる。
和子は申し訳無さそうに首を振った。
「いえ、鍵は旦那様の持っている一つで……」
「ああッ!!あなた!!」
雪江が悲痛な叫び声をあげる。
浩之は意を決した表情をした。
「こうなったら……。扉を壊すしかないな」
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