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「しょーもねーアトラクションはやめろ。
10000人目の客なら10000人目の客ってすっぱり言え。そんでさっさと二人分の豪華粗品よこせこのスカポンタン。」
目の前の光景をひとしきり眺めた末に、すぐりは胸元に館長の文字が光る女性に掌を突き出す。
「日本語がおかしいわ。」
豪華な粗品、というすぐりの言葉に、小さく笑いを漏らす女性。
彼女は片手にそれを持って立ち上がると、そのままつかつかとすぐりに歩み寄った。
「まあ、いいわ。
10000人目の客じゃないけど、乞食根性のポンコツにいいものをあげる。」
後退するすぐりににじり寄り、ついにすぐりを壁まで追いやった女性。
彼女のヒールに踏まれて、マイロイドマスター、そしてマイロイドの情報が詰まったマスターカードが、ぱきんと音を立てた。
「水族館の為に働きなさい。」
そう言うか早いか、女性は片手に持ったそれ、ヘルメットのような容貌の機械を、すぐりの頭にはめ込む。
「っ……!?」
途端、機械は唸りを上げ、すぐりは表情をゆがめる。
「すぐり!?
お、おい…何だよアレ!?」
「今に分かるわ。」
再び椅子に腰掛けると、女性はにたり、と口角を持ち上げる。
やがて機械の唸りが止み、すぐりは閉じていた目をゆっくりと開けた。
「ふふ。ポンコツ上がりできちんと働くかしら?」
装置をつけたまま、すぐりは女性へと向き直る。
「…す、すぐり……」
すぐりは洋助の声にも応えず、女性の方へ歩む。
「貴方、この館内のマイロイドを…」
その姿を認めた女性が満足げに笑んでみせてから口を開いた刹那、部屋中に静かな、しかし重い音が響いた。
「ナメた真似してんじゃねーぞ、このクソアマ。」
音とともに走った鈍い痛みに頬を押さえ、女性は顔をあげる。
そこには、拳を握りしめたすぐりがいた。
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