第一章-イレイズ

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夜の真っ只中、古びた教会の前に男が一人。 彼は取っ手に手を掛け、ゆっくりと扉を開いた。 軋んだ音が響く。 中には明かり一つ就いてはいない。 ただただ、真っ暗な闇が広がるのみ。 埃を被った床を踏み締めながら、男はポツリと呟いた。 「…ただいま。」 当然返事は無い。 此処には彼以外、誰も居ないのだから。 男は暫くして、埃の被った椅子に腰を降ろした。 教会の中を懐かしむような表情で見回し、半壊して横たわっているマリア像に目を移す。 「……」 男は無言のまま、像を見つめていた。
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