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俺たちは本部へ戻る。海も、一度眠らせて本部へ連れていく。
皐月は至近距離で喰らったショックで気絶していただけで、大したことはないそうだ。
秋は京を追いかけたようだが、見失ったらしく、もう戻っている。先に出た海を狙ったあの鬼は笹島さんが追跡中。俺と正也は、和泉さんと和也さんに状況報告。
正也は、今日駅で海を見かけた時点で、なにかしらの気配を感じていたらしい。だからこそ誘ったらしい。当然俺も気付いているとおもったらしい。が、俺は全く気が付かなかった。どうなってんだ。
海を狙った鬼。冷静だった。あの黒い鬼とは雰囲気が違う。どこかでみたような、皐月に似てるのか、違うな。
報告を終えて、正也は別室で眠る海の傍に付き添っている。目が覚めたら、ここは病院という設定で話すことになっている。けど、ばれるよな。
俺も海のいる病室に入る。正也が海のベットの脇に座っている。俺が入っていっても、こちらを向く様子もなく何か考え込んでいる。
俺はさっき買ってきた缶ジュースを正也に差し出す。
「ああ。悪い。」
正也は無表情に受け取る。
「なあ、悠馬」
「ん?」
「どうみえた?親父と京。」
「ああ、なんか複雑そうだったな。」
「ちょっと、ここ頼めるか。」
「ああ。」
正也は思いつめたように部屋を出ていく。大丈夫かな。
俺は眠る海を眺める。海をすっかり巻き込んじまったな。でも、あの鬼は正也でも俺でもなく、海を狙ってた。なんでだ。海が眠っている間に救護班の人が海の検査をしたらしいので、近いうちに結果が出るだろう。
和正と京。和正、三鬼を治める者。
三鬼。実物を見たのはさいきんになってからだし、それまでは人型の鬼にだって遭遇したことがなかった。ましてやそれが組織内を普通にうろついているとは。その上、正也が皐月の子供だとはな。半分は鬼、どんな感じなんだろう。
鬼もそれを治める者も、俺にはよくわからないけど、両者はお互いにとって特別な存在なんだろう。正也は京のとこを気に掛けてる。自分を誘拐したやつなのに。
前回、京は正也にキスをしてた。実際にはキスではなく生気のやり取りだったわけだけど、でも、そういう風にも見えた。
正也の中には京の印が付いてる。俺の腕に巻き付いた京の炎。あれは正也に対する執着。
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