出合い (正也)※R-18

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「え、なに、、、」 「・・・・・やっぱいいわ」  肩に掛っていた俺の手をそっと払うと、フラフラと歩いていく。おれは見詰められたショックでしばらくその後ろ姿を見送っていた。彼女ははっきりいって美少女だ。我に返った時には、彼女の姿はなかった。急いでドアの外へ出て、見回す。通りの向こう側で、柱にもたれかかったかと思うと、ずるずると座り込むのが見える。駆け寄る。 「大丈夫か、やっぱフラフラじゃねーか」 「腹減った、、、」 「はぁ?」  思わす口に出してしまった。呆れた、今度は何だって。なんか手に負えない気がしてきた。制服のままぶらつくわけにもいかないし。 「警察いくぞ」 「はぁ?」  今度は彼女が呆れた声を出す。 「はぁ、じゃねーの。子供を保護したから警察にとどけるんだよ。」 「子供じゃねーよ。」 「どう見ても子供だろーが。」  このくそガキ、っと言いたいが、後半は呑みこんだ。 「お前より年上だよ」  このガキ、マジで張り倒してやりたい。人が心配してやってんのに。 「ふざけんなよ。」 「ふざけてねぇよ。」  怒鳴りつけそうになるが、相手は女の子、抑える。 「あのな、俺は大人の女と中学生の見分けくらいつくぞ。」 バカにしてんのか。何も応えない。観念したか。 「警察には行けない」  しょげた様子でそう言った。その様子に、ついほだされる。なんか事情があるんだろうな、とか思ってしまう。まあ、飯食わして、ちょっと金持たして送り出すか。  俺はあろうことか彼女を自宅に連れて帰った。よく考えたら、かなり危ない。下手すりゃ、少女拉致監禁で捕まってもおかしくない。なんてバカなんだろう。  冷蔵庫のあり合わせで、カレーを作って食べさせる。連れて帰ってみると、意外に背が大きい。さっきは子供だと思ったのにな。 「料理できるんだ?」 「まあね、そういえば名前なんていうの、俺は正也。」 「きょう」  テーブルに指で漢字をなぞって見せる。ああ、その京ね。学校行ってないって言ってたけど、学はあるようだ。 「京ちゃん」  彼女は、ぷっと吹き出す。 「な、、、何?」 「ちゃんって、京でいいよ、俺も正也って呼ぶし。」 「年上を呼び捨てかよ。」 「だからこっちのが上だって。」  京は真面目な顔で言う。  京は食べ終わると、きちんと食器を片づけた。感心。感心。よくできた子だ。
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