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「あれ、京のでしょう。」
「ああ、何といわれても困るが、封印みたいなもんだ。たぶんな。だから発動できない。」
「なんのために?」
「さあ、よくわからんが、マーキングみたいなもんかな。」
「そうですか。わかりました。じゃあ、お邪魔しました。俺、下にいますね。」
頭を下げてドアに向かう。
ドアを開けて、少し振り返る。和泉さんはすでに書類に向かっている。
開けた掛けたドアをそのまま閉める。和泉さんの方へ戻って、デスクを迂回して隣に立つ。座っている和泉さんが驚いたように俺を見上げる。俺は机に手を付いて身を屈め、和泉さんの唇を奪う。
「、、、和、、、也。」
和泉さんは顔を背け、俺を押しのける。それでも、無理やりキスをして、唇を割る。
「、、ん、、ぅ」
和泉さんは抵抗して、思いっきり付き飛ばされる。
「お、、まえ。どういうつもりだ。全然反省してないな。」
「反省は、してます。でも、それとこれは別です。」
コンコンとノックする音。
「和泉、いるか。」
大貴さんの声。
「どうぞ。」
和泉さんが答える。
入ってきた大貴さんが、おっという顔をする。
「お疲れ様です。」
俺はいつも通りに笑顔で挨拶をする。
「ああ、すまんな。話し中だったか。」
「いえ、俺はもう済んだんで、失礼します。」
二人に頭を下げて部屋を出る。
“どういうつもり”?そんなのこっちの台詞だ。
エレベーターが開くと秋が立っていた。
「あ。」
「おう。」
ああ、なんか、今ちょっと、一人になりたい、けれど乗らないのもなんなので、乗り込む。
ドアが閉まる。
「なんつー顔してんだ。」
秋が言う。
言うなよ。気付かない振りしてくれ。
「な、、何が。」
腕をグイッと引っ張られて、抱きしめられる。
「あ、秋?」
秋は何も言わない。
ウィーン、とドアが開く音。
俺も秋もドアの方を見る。
開いたドアの向こうに立っていたのは、和泉さん。
「あ、、、」
俺と秋の声が重なる。
和泉さんも一瞬驚いた顔をしたが、すぐに青筋が立つ。
「んなとこで何してんだ、お前ら。」
お、怒ってる。
「お、落ち着いて、和泉さん。」
「何って見ての通り。邪魔してくれるな。」
秋はそう言って閉まるのボタンを押す。
秋はさらに俺を抱き寄せる。
おいおい、秋。
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