仲間1(和也)

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 ドアが閉まっていく。  ガシャン、それを和泉さんが手で制する。 「ふざけるな。お前には日和がいるだろう。」 和泉さんが秋に詰め寄る。 「だからって、和也がてめえのもんってわけじゃねえだろうが。」 和泉さんより背の高い秋は文字どおり、和泉さんを上から見下して凄む。 「なんだと!」 和泉さんが怒鳴る。  うしろの事務所のドアから何事かと人が出てくる。  あれ、ここ、4階?と俺は気が付く。 「どうした。」 同様に出てきた大貴さんが寄って来て和泉さんを止める。  秋は何も言わない。 「いえ、すみません。」  和泉さんはそういって自室に戻っていく。  騒ぎをきいて出てきた人たちがこちらを窺っている。 「どうしたんだ?」  大貴さんが秋を見る。  秋は悪びれもせず、知らん顔。  大貴さんは俺に視線を移す。  う・・・てか、俺まだ秋に抱かれたまんまだ。秋の腕をほどく。 「なんでもないんです。すみません、お騒がせして。」 大貴さんはふうっとため息を吐く。 「あまり和泉をいじめてやってくれるな。あいつはあいつで大変なんだから。特に、秋。」 大貴さんは秋を睨む。秋は答えない。大貴さんは引かない。 「わかったって。」  秋は渋々答える。  大貴さんはうんと頷くと、エレベーターの2階のボタンと閉まるを押して戻っていった。  沈黙。  なんだったんだ。  俺は2階で降りる。秋も付いてくる。 「和也、コーヒー。」 「ん。」  給湯室でコーヒーを沸かす。  疲れた。  “お前には日和がいるだろうが”って、怒ったのは、俺じゃなく日和さんのこと。俺の方は見もしなかった。  でも、なんで扉が。  大貴さんがボタンを押していったのを思い出す。  そうか、俺行き先のボタン押してなかった。でも、秋はエレベータに乗って来て、、、秋は、4階に来たのか。俺がいたから降りなかった。  なんつう間の悪さ。  くそ、、、秋があんなことするから。コーヒーに毒盛ってやる。  秋の前にコーヒーを置く。  俺は離れた席に座る。  しばらくして秋がせき込むのが聞こえた。 「うわ、、、何だこれ。」 「こら、和也てめえ。俺に八つ当たりすんじゃねえ。人が心配してやったのに。」  秋が俺に向かって叫ぶ。 「八つ当たりしてんのはそっちだろ、日和さんがいないからって。」 「なんだと」  秋が立ち上がる。
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