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「ちょっと、二人とも。」
近くに居た正也が秋を止めに入る。
秋は出ていく。
「これ、何?」
正也がコーヒーカップを持って俺の傍へ来る。
「・・・塩コーヒー」
「ったく、ガキみたいなことすんなよ。」
「うるせーよ、どうせ俺はガキだよ。」
ああ、ガキだよ。好きなやつのことで頭ん中いっぱいになっちまうガキだよ。
「何があったかしらないけど、秋にちゃんと謝れよ。八つ当たりとかどうとか言ってたけど、秋はそんなことしない。あいつはいろんなことちゃんとわかってる。知ってるだろ。」
俺は答えない。
正也は給湯室の方へ歩いて行く。コーヒーを片づけにいったのだろう。
“いろんなことよくわかってる”だと、わかってたらあんなこと言わねえだろ。
“なんつー顔してんだ。”
“だからって和也がてめえのもんってわけじゃねえだろうが”
“人が心配してやってんのに。”
秋の台詞が甦る。
あれ?
まさか。
秋は、気が付いて・・・。いや気付かれるようなことはなにも。
「う、、う」
俺は頭を抱えて呻く。
そのあと秋と正也と俺は和泉さんを残して三人で先に帰ることになった。秋と俺は口をきかない。正也は特に気にしてはいないようだけど、何も言わない。
食事中も無言。
食事の後、正也と秋はそれそれ部屋へ。俺は風呂に入って、リビングでテレビを見る。いつの間に眠ってしまったようで気が付くと1時間が過ぎていた。そうだ、弁当の用意しないと。台所へ行く。買い物いくの忘れてた、どうしような。今日の残りものとっと考えていると風呂場のドアが開く音がする。つい無意識にそっちを見る。秋が出てくるところだった。目が合う。
気まずい。俺は見なかったことにして作業を続ける。
秋が俺の隣に立つ。風呂上がりで湯気が立ってる。髪からは滴が落ちる。
何だよ。そのまま秋は何も言わない。
・・・降参。
「さっきは、ごめん。」
俺は謝る。
「うん、よくできました。」
秋は俺の頭にぽんっと手を載せる。
グイッと引き寄せられて肩に抱かれる。
ええっと、だから・・・今日はなに?
俺はちらっと秋を見上げる。秋が、ん?っという顔をする。
ガチャとドアが開く音、とちゅっという音。
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