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「あー、久しぶりに遊んだー。」
「なんだよ、正也。」
海がどうしたんだ、というように俺を見る。
「ずっと家と学校の往復だし、この前ちょっと寝込んでたから。」
「もういいのか?」
悠馬が訊いてくる。
「うん、お陰様で。」
「早く自由に動けるようになりてーよ。」
「まだ、だめなのか。今日、誘ってよかったか?」
海が少し気にしたように言う。
「あー、今日は平気平気。俺もたまには外でねえと、カビ生えるし。」
悠馬の携帯が鳴る。
話し方からして、たぶん和泉さんだ。呼び出しかな。悠馬とは駅で別れる。俺は海と電車に乗る。悠馬はどこへいくんだろう。あいつは兄貴と同格くらいだからな。俺にもあれくらい能力があればな。
「どうした?正也」
「なんでもない。」
「やっぱ、元気ねえな。」
「そうか?別になんもねえけど。」
「俺に話せよ。絶対、他言しないから。だいたいこの前だって、俺に話があったんじゃないのか。あんなことがなけりゃ。もっと違う話があったんじゃないのか。」
見抜かれてる。さすがたな、俺は素直に感心する。
「そうだな。お前さ、将来とか考えたことある?」
「え、、、あー、就職とか?」
「そ、どうなりたいか、とか。親のこととか。」
「うーん、まあ、なくはないな。親は、うちは妹だから、俺がみるだろうし。仕事は高卒で働くつもりだからそろそろ考えてはいるけど。お前は?」
「うん、俺はさ、進学して働こうって思ってた。で、母さんの面倒をみてって」
「“思ってた”って?」
「ああ、大筋は変わらないけど、進学もするし働きもするし親の面倒も見るけど、なんか俺の思ってたのとは違うっぽい。それがいやとか、そういうわけじゃないけど。先が見えて、周りが見えて、それが自分が予想してたのと違って、自分の力じゃどうにもならないことばっかでさ・・・。」
「正也。」
海が俺を見詰める。
「悪い、愚痴だ。」
「いいよ、愚痴でも、何でも言えよ。聞いてやるしかできないけど。」
「ああ、それでいいんだ。」
それが、ただ聞いてくれることが、いいんんだ。
俺の乗り換える駅に着く。
「またな。」
俺は海の肩を叩いて降りる。
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