仲間2(正也)

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降りる背中に、海の声がする。 「正也、しっかりしろ。お前なら大丈夫だ。強いだろ。」 俺は振り返る。 ドアが閉まる。 ガラスの向こうで、海は変顔を作る。馬鹿だな。俺は思わず笑う。 海も笑った。  携帯でメールを送る。 『ばーか、恥ずかしいわ。でも、サンキュな。』    改札を出ると、いつものように秋が立っている。 「今日はありがと。」 「ああ、子供は遊ばんとな。」 「京は?」  秋は首を振る。 「そっか、何やってんだろな、あいつ。」  俺は会いたいのに。 「京ー。」 俺は叫ぶ。 「うわっ、なんだよ急に。ビックリするだろ。」 秋がびくつく。 「呼んだら出てくるかなって。」 俺はへへっと笑う。 「そうだな、そうかもな。」 秋がふっと笑う。 「あ、そうだ。日和さんってどんな人?」 「はぁ?」 「和泉さんと似てんの?」 「そりゃ、まあ、似てるな。性格はあんな乱暴じゃねえぞ。」 「へえ、やっぱ美人なんだ。」 「おお、美人だ」 秋は自慢げに言う。 俺たちは一度家に戻ってから買出しに出る。 「てかさ、和泉さんマジこえーよな。」 「今さらどうした?」 「兄貴と家にいるとさ、けっこう笑顔だから。」 「そうか?俺はあんま和泉に興味ねぇから。」 「なんでそんなに和泉さんキライなんだよ。」 「べつに、嫌いじゃねえよ。」 そうは見えないけど。 「普段からつっかかってる癖に。」 「あれは絡んでやってんだよ。あいつ不器用だから。」 不器用はお前だろ。 「ものは言いようだな。」 「生意気言うんじゃねぇ。噛みつき坊主。」 やっぱ根に持ってるな。
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