仲間2(正也)

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 兄貴たちは遅くなるというので、俺と秋は先に夕食を済ませた。後片付けをしていると兄貴達が帰ってきた。 兄貴は着替えて、台所で二人の食事の準備をする俺に傍へ来る。 「お、うっまそー。肉だ、肉だ。」 「今日は特売だったんだ。」 俺はニッと笑って見せる。 「今日は楽しんできたか?」 「うん、久々で楽しかったよ。」 「すまんな、悠馬、途中で抜けただろ。」 和泉さんが言う。 「いえ、もう帰るとこだったんで大丈夫です。」  兄貴と和泉さんが並んで食事をしてる向かいに俺も座る。兄貴があれこれ話すのを、和泉さんが“ああ”とか、“うん”とか言ってる。和泉さんちゃんと聞いてるのか疑問だ。  なんか、夫婦みたいだ。愚痴を言う妻と、それを聞き流す旦那、みたいな。俺はそんなことを思いながらぼーっと二人を眺めていた。  和泉さんがふと俺を見る。 「正也、そろそろ進路じゃないのか。」 「え、ああ、はい。」  いきなりで面食らう。 「そうか、そろそろ進路調査か。」  兄貴が俺を見る。 「希望は?」  和泉さんが俺に聞く。 「まだ理系か文系かも、迷ってて。」  俺は素直に答える。 「でも、お前いま理系だろ?」  兄貴が言う。 「じゃあ理系の方がいいんじゃないか?」 と和泉さん。 「理系の大学は単位取るの大変ですって。俺見てくださいよ。現実問題、文系の方が卒業はしやすいですよ。」 「卒業のしやすさで選んでどうする。何がしたいかで選ぶもんだろ。」 「そうですけど、組織のほうもあるし、両立って結構大変なんです。就職も決まってんだし。」  ・・・この二人って、 「父ちゃんと母ちゃんみたい。」  俺は思わずいってしまった。二人がそろってこっちをみる。 「あ、、ほらうち両親不在だし、普通の家庭ってこんなかなって。」 「俺と和泉さんの子ならもっとかわいいね。お前みたいに生意気じゃねえ。」  二人が夫婦ってのは否定しないのか。 「俺はともかく、和也が母親ってのは、荷が重いよな。」 「何が言いたいんですか。だいたい、なんで俺が母親って決まってんですか。父親でもいいでしょう。」 「無理だな。父親ってのは、威厳ってもんがないと。」 「あー、そうですよね。母親ってのは、俺のように広ーい心がないと務まらないですからね。」 「どういう意味だ。」  なんか、はじまっちゃった。
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