704人が本棚に入れています
本棚に追加
兄貴たちは遅くなるというので、俺と秋は先に夕食を済ませた。後片付けをしていると兄貴達が帰ってきた。
兄貴は着替えて、台所で二人の食事の準備をする俺に傍へ来る。
「お、うっまそー。肉だ、肉だ。」
「今日は特売だったんだ。」
俺はニッと笑って見せる。
「今日は楽しんできたか?」
「うん、久々で楽しかったよ。」
「すまんな、悠馬、途中で抜けただろ。」
和泉さんが言う。
「いえ、もう帰るとこだったんで大丈夫です。」
兄貴と和泉さんが並んで食事をしてる向かいに俺も座る。兄貴があれこれ話すのを、和泉さんが“ああ”とか、“うん”とか言ってる。和泉さんちゃんと聞いてるのか疑問だ。
なんか、夫婦みたいだ。愚痴を言う妻と、それを聞き流す旦那、みたいな。俺はそんなことを思いながらぼーっと二人を眺めていた。
和泉さんがふと俺を見る。
「正也、そろそろ進路じゃないのか。」
「え、ああ、はい。」
いきなりで面食らう。
「そうか、そろそろ進路調査か。」
兄貴が俺を見る。
「希望は?」
和泉さんが俺に聞く。
「まだ理系か文系かも、迷ってて。」
俺は素直に答える。
「でも、お前いま理系だろ?」
兄貴が言う。
「じゃあ理系の方がいいんじゃないか?」
と和泉さん。
「理系の大学は単位取るの大変ですって。俺見てくださいよ。現実問題、文系の方が卒業はしやすいですよ。」
「卒業のしやすさで選んでどうする。何がしたいかで選ぶもんだろ。」
「そうですけど、組織のほうもあるし、両立って結構大変なんです。就職も決まってんだし。」
・・・この二人って、
「父ちゃんと母ちゃんみたい。」
俺は思わずいってしまった。二人がそろってこっちをみる。
「あ、、ほらうち両親不在だし、普通の家庭ってこんなかなって。」
「俺と和泉さんの子ならもっとかわいいね。お前みたいに生意気じゃねえ。」
二人が夫婦ってのは否定しないのか。
「俺はともかく、和也が母親ってのは、荷が重いよな。」
「何が言いたいんですか。だいたい、なんで俺が母親って決まってんですか。父親でもいいでしょう。」
「無理だな。父親ってのは、威厳ってもんがないと。」
「あー、そうですよね。母親ってのは、俺のように広ーい心がないと務まらないですからね。」
「どういう意味だ。」
なんか、はじまっちゃった。
最初のコメントを投稿しよう!