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「何?私たちの話?」
母さん、親父、秋がいつのまにか部屋の入口に立ってる。
「あんたらの話じゃない。俺がいかにいい父親で、和也に母親は務まらないって話だ。」
なんの、話だよ。
「和泉。うちの和也はお前の嫁にはやらんぞ。」
親父が真面目な顔でいう。まあ、ふざけてんだろうけど。
「そういう話じゃねえよ。ほしいなんていってない。」
と和泉さんは面倒そう。
母さんはくすくすっと笑う。俺は母さんの笑顔を久しぶりに見た気がする。
「親父たちも飯どう?」
「ありがとう、でも食べてきちゃったわ。」
「そういや、皐月。お前って料理できたっけ?」
秋が訊く。
「失礼ね。できるわよ、ねぇ。」
と親父に振る。
「ああ、そうだな。」
なんとなく歯切れが悪い。
「お前んとこの坊主どもは料理が上手いぞ。和泉にやるくらいなら俺にくれよ、和正。」
「なんだ、日和はどうした。怒られるぞ。」
「状況によってはありえるだろ。」
秋は悪びれず返す。
「どういうこと?」
母さんが秋を見る。
「可能性の話だ。この二人はお前には付かない。だったら、日和がお前を継いで、どちらかが俺を、そしてどちらかが京を継げば丸く収まる。」
「なんだ、俺はもうお払い箱か。」
親父が肩をすくめる。
「そうじゃない。二重ロック。和正一人じゃ、もし和正に何かあったら俺たちはどうなる。」
「何かって、そんなことさせないわよ。」
「わかんねえだろ。100%なんてない。お前、自分の子供を手に掛けることになるかもしれないんだぞ。流暢なこといってる場合じゃねぇ。正也も覚醒したんだ。そろそろその辺の話をしてもいいんじゃねえのか?」
秋は真面目だ。
「まあ、そうだな、私も考えてないわけじゃない。それにはまず京に戻ってもらわないとな。今日はその話をしに来たんだ。秋の話によると、京は正也の近くにいるかもしれない。それでだ、不本意ではあるが、秋の言う通り流暢なことは言ってられん。正也に囮になってもらおうと思う。」
一瞬の間をおいて兄貴が立ち上がる。
「な、何言ってんだよ、親父。」
「私だって悩んだ末の決断だ。」
「だめだ、ふざけんな、このくそ親父。母さん。あんたもなんか言えよ。」
兄貴が怒鳴る。
「正直言えば、もちろん反対よ、でも私は和正に従う。」
「・・・信じらんねえ、なんだよそれ。それでもあんたら・・・」
「和也。」
和泉さんが兄貴の言葉を遮る。
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