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沈黙。
「俺はそれでいいよ。」
全員が俺の方を見る。
「というか、それしかないと思ってる。ホント言うと、俺がもう少し能力を付けてからのがありがたいけど。でも、俺は京を早く戻してやりたい。だから大丈夫。兄貴、サンキュな。うちの両親はこんなもんだよ。兄貴だって知ってるだろ。だから、代わりに和泉さんと兄貴が父ちゃんと母ちゃんだろ。そんで、秋もいてくれる、だよな。」
俺は秋を見る。
「ああ、任せろ。」
秋は俺をみて頷く。
「正也。」
兄貴が俺を見る。俺は兄貴に頷いて見せる。
「正也になにかあったら、親父、母さん、それから秋、承知しないからな。」
三人は深く頷く。
「詳しいことは後日本部で。今日はもう遅い、私たちは帰るよ。正也、よく言ってくれたな。それから和也、お前も。お前がそう言ってくれるから私たちも正也も救われる。」
親父は怒るでもなく、落ち着いてそう言った。
「本当に、私たちはいい息子を持ったわ。」
母さんも落ち着いている。
二人はそれだけいうと帰っていった。
兄貴は明らかに怒ってる。
「兄貴、ごめん。」
「いま、話しかけんな。」
部屋へ行ってしまう。
「和也。」
和泉さんが呼び止める。
「解ってます。解ってますけど、腹の虫が収まんないんで、ちょっとほっといてください。」
それでも和泉さんは兄貴のあとを追う。
秋と目が合う。
「すまんな。」
秋が申し訳なさそうに言う。
俺は首を振る。
「よかったよ、言い出してくれて。いやな役させてごめん。」
秋はふっと笑った。
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