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海の家の隣の屋根から観察。窓のカーテンは閉まっていて、電気も点いていない。
「うーん、なんだろうな。触ってみないとわからんな。」
笹島さんが俺を見る。なにを言いたいかは分かった。
「はい、いってきます。」
仕方がない、俺は携帯を出して海に掛ける。
海はすぐに電話に出た。
「はい。」
「あ、海?今いいか?」
「おう、なんだ?」
「ちょっと話たいことがあって、今お前の家の前なんだけど。」
「え、ああ。・・・家の前?。」
「悪いな、急に。」
「ちょっと待ってろ。」
電話が切れる。
俺は下へ降りて、玄関へ向かう。
玄関のドアが開き、海が出てくる。
「どうした?」
俺はにこっと笑顔を作る。
「わりぃな。」
「ああ、まあ、上がれよ。」
海は部屋に通してくれる。やっぱりあの部屋だ。
侵入成功。
「きったねえ。」
俺は海の部屋を入り口から部屋を見渡す。想像よりも、荒れている。まあ、男子の部屋はたいがい汚いもんだけど、それにしても。
「うるせえわ。それよか、話って?」
「あー、いや。今日ごめんな。女どもが付いて来ちまっておまえは知り合いじゃねーのに、正也と会うのも久しぶりだったんだろ?」
部屋に入る。特におかしな感じはしない。
「ああ、いいよ。おもしろかったし。」
「そっか。」
俺は窓に近づき、カーテンの隙間から外を覗く。向かいの屋根に二人の影。やっぱり、移動してない・・・。あんたらがそこにいるとまずいんですけど。
「なんか飲むか?ちょっと待ってて。」
タイミング良く海は部屋から出ていく。
チャンス。
俺はカーテンを開けて、腕を振って“退いてー”、と合図する。二人は、”あっ”という感じで、消える。暢気だな、あの人たち。
窓の外に張り付く結界、なのか?。窓を開ける。発動。
海、まだ戻って来るなよっと念じながら、そっと手を触れる。何だ、これ。
部屋の外に足音。
俺は能力を納める。海が部屋に入ってくる。
「何してんだ?」
「ああーっとたばこ、いい?」
「いいけど、お前、吸うの?」
「あーっと、たまに。」
俺は鞄からたばこを探す。俺は喫煙者ではないけれど、一応小道具として必要なこともあるので持ち歩いている。
「たまにってなんだ?灰皿ないから、これな。」
近くにあった空き缶を渡される。
「ありがと。」
ペットボトルのコーラをもらう。
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